めまい・難聴センター
超高齢化社会を迎え、今後「めまい・難聴」でお困りの方が増えていくことが予測されます。「めまい・難聴」はお互いに関連することも多く、「めまい・難聴」両方の症状に苦しんでいる方もみられます。当院では2014年から「めまい外来」を開設し「めまい」に苦しんでいる方の診療をしてまいりましたが、このたび「難聴外来」「補聴器外来」を新設し、めまい・難聴センターを開設しました。今後は、「めまい」だけでなく「難聴」で困っておられる方の治療・補聴器のトレーニングをサポートし、患者さんのQOL(生活の質)向上を目指してまいります。
めまい外来の特徴
「めまい」は日常でよく経験する症状ですが、原因は多岐にわたり、ときに治りにくく不安を感じている方もたくさんおられます。また、「めまい」を訴える患者さんは、内科や脳神経外科、耳鼻咽喉科など複数の診療科が関与しており、最初にどの科を受診したらいいのか迷われる方も少なくありません。
「めまい」を訴える患者さんは、まずは当センターに受診していただければ問題ありません。「めまい」には脳梗塞などの脳の病気が原因となるものもあり、心配される方もおられるかと思いますが、当院ではMRIをはじめ画像診断が充実しており、必要があれば脳神経外科、脳神経内科と連携して治療にあたりますので安心して診療を受けていただけます。
・良性発作性頭位めまい症
・頭痛に伴うめまい
難聴外来の特徴
21世紀は難聴の世紀になると考えられています。日本においては高齢化がますます進み、現在1500万人を超える高齢者の難聴の方がいると推測されています。
当院の難聴外来では、補聴器外来を中心に、さまざまな難聴でお困りの方に力を尽くしたいと考えています。
聞こえのしくみ・難聴
「耳」は、外耳(外界から音を集めて鼓膜まで伝える部分)・中耳(鼓膜に伝わってきた音を増幅する部分)・内耳(音の振動を電気信号に変換する部分)という3つの部分から成り立っています。
難聴には、以下の3つあります。
① 外耳・中耳に異常がある伝音難聴
例)耳垢塞栓:耳あかが詰まっている状態
滲出性性中耳炎:中耳に滲出液が溜まっている状態
慢性穿孔性中耳炎(鼓膜穿孔):鼓膜に穴があいている状態
耳硬化症:中耳で音の増幅が上手く働かない状態
② 内耳・神経に異常がある感音難聴
例)突発性難聴・騒音性難聴・加齢性難聴・先天性難聴 など
③ 伝音難聴・感音難聴 両方が合併した混合性難聴
伝音難聴は、手術(鼓膜チューブ挿入術・鼓室形成術など)によって聞こえが改善する場合があります。感音難聴については、突発性難聴であれば早期の薬物治療等にて改善する可能性があります。騒音性難聴は基本的に予防が大切です。加齢性難聴については、現時点で治療困難ですが、補聴器を装用することで生活の質を改善し、認知症を予防することができます。
聞こえが悪いと・・・?
難聴の状態では様々な社会生活に支障をきたします。
・ 日常会話や環境音などの必要な音が聞こえず、社会生活に影響を及ぼす
・ 車の音やクラクションなど危険を察知する能力が低下する
・ 認知症発症のリスクが大きくなる
・ 社会的に孤立してしまう
難聴があると認知症になりやすい!?
近年、難聴と認知症には関連があることがはっきりとしてきました。難聴があることで脳への刺激が少なくなること、社会的に孤立することにより認知症になりやすいと考えられています。難聴を予防すること、すでに難聴がある方は補聴器を活用して脳への刺激を絶やさず、積極的に社会活動に参加することで認知症が予防できることが期待されています。
補聴器外来の特徴
補聴器、と言われると大抵の人は「まだ必要ない」「うるさいだけでよく聞こえないものだ」と否定的な反応を示します。実は補聴器はコンタクトレンズや義肢と違い、医師の処方箋がなくても一般の業者でも簡単に販売することができるため、日本においては本当に患者が満足できる補聴器の使用ができていなかった背景があります。
当院では、済生会宇都宮病院の提唱している補聴器を用いた「聞こえのトレーニング」を行なっています。一般的に補聴器は、眼鏡と違い、トレーニング(リハビリテーション)が必要です。
補聴器を装用すると、今まで難聴によって聞こえなかった様々な環境音が耳に入ってきますのでうるさく感じて最初は慣れないですが、具体的には3ヶ月間、当科のスタッフと共にトレーニングを進めていきます。その期間のトレーニングによって至適な補聴器を作成し、かつ「難聴の脳」を変えて行くことが最大の目的です。
当院では医師と言語聴覚士が補聴器調整に携わっており、これまでたくさんの方に補聴器を使っていただき、「聞こえ」の力を引き出します。
広報誌「かけはし」 特集:加齢性難聴~耳が遠いと、脳にも良くない~
耳鼻咽喉科主任部長代行・副部長
清水 良憲
(しみず よしのり)
免許取得:平成13年
受診について