目標に向かってチームで取り組む 医療安全活動
当院では、安心・安全の医療をめざし、医療安全対策委員会を結成。さまざまな医療安全活動に取り組んでいます。
その一つが、「医療安全全国共同行動 いのちをまもるパートナーズ」への参加です。これは医療行為に伴う有害事象(検査や治療・処置の過程で生じるけがや合併症など)を可能な限り低減し、医療事故の防止に取り組むことを目的とした全国共同キャンペーン。全国の病院や医療関係団体が共同して活動を行います。2008年に実施が呼びかけられ、全国で500もの医療機関が参加。2009〜2010年までの2年間にわたって活動が展開されました。
「当院もこのキャンペーンに参加し、職種や立場の壁を超えた約100人のプロジェクトメンバーで行動目標の実現に向けて活動し、確かな成果を得ています」と話すのは、当院の医療安全管理室長の有田光一ゼネラルリスクマネージャー。当院は同キャンペーンが掲げる8つの行動目標に取り組み、ほとんどの項目で行動目標を達成しています。
2011年より、「医療安全全国共同行動 いのちをまもるパートナーズ」は第2期がスタートしました。第2期では新たな行動目標が追加され、9つの行動目標が設定。
当院ではこの中から
の5項目に焦点を絞り、チームを結成。達成目標を明確にした医療安全活動に取り組んでいます。
チームは医師、看護師、薬剤師、技師、事務職員など多職種で構成。チーム長を中心に行動目標を達成するための方策をメンバーで話し合い、進捗状況をチェックしながら進めていきます。
全国共同行動には、安全の効果が期待できると分かっているやり方(根拠に基づく指針や手順)が提示されています。このやり方を当院の実情に合わせ加工した後、医療安全対策委員会の承認のもと病院全体のルールとしています。そしてその後、ルールが守られているかを医療安全推進部会でフォローアップし、実践へとつなげていきます。
チームでの活動がどのように病院全体の医療安全活動となっていくのでしょうか。その一例として、「患者参加による転倒転落防止」をご紹介します。
「患者参加による転倒転落防止」は、第2期で新たに取り組みを始めた活動の一つ。転倒転落は医療事故の約30%を占めており、骨折すると退院が伸びるなど患者さんへの大きなダメージにつながります。これまでも防止策に取り組んできましたが、このたび、その活動をより強化するためチームを結成。病院スタッフだけでなく、患者さんにもご理解・ご参加いただくことをテーマに、患者さんに接する機会が最も多い看護師が中心となって活動を展開しています。
チーム長を務めるのは看護部の清水紀子部長。「転倒転落は年々増加傾向にあります。普段なら何ともなくても、慣れない入院生活のためちょっとしたことが転倒転落につながることも。病院スタッフの取り組みはもちろんですが、患者さんとそのご家族にもあらかじめその旨をご説明し、ご協力をお願いしています」
その他にも認知症やせん妄(薬によって一時的に意識がぼんやりすること)により、転倒転落を引き起こすケースもあり、充分な注意が必要となります。
当院では入院前に自己チェックシートをお渡しし、転倒転落のリスクがある患者さんにはスタッフが一緒に予防に努めています。
転倒転落はちょっとした注意で未然に防ぐことができます。そのため、患者さんにあらかじめ危険性をご理解いただき、注意事項をお知らせすることも予防につながります。当院では転倒しやすい事例に基づき、リーフレットを作成。
「チームで内容を話し合い、イラストを用いたわかりやすい表現を心掛けました。リーフレットの内容は医療安全委員会にも提出し、チェックを経て承認後、病棟全体で活用していきます」(清水部長)。
その他にも転倒転落を防止するための器具も採用しています。踏むと音がなるコールマットもその一つ。一人歩きが心配な患者さんのベッドの下に敷いておけば、ベッドから降りようとした時にマットが反応し、スタッフにコールサインが送られます。
同様に背中に取り付けるタイプの離床センサーやベッド柵を握ると音がなるタッチコールなど患者さんの状態に応じて使用を検討、患者さんのご了解のもと活用し、事故防止につなげています。
「患者さんのご協力のもと、転倒転落を減らすのが目標です。達成できるよう、今後もチームを中心に活動を行っていきたいですね」と清水部長。
このように、当院では行動目標に応じてチームで取り組む医療安全活動を実践。院内の医療安全文化を育んでいます。
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