回復を助け、治療の質を高める 栄養サポートチーム・NST
医療の現場で活躍するNSTというチームをご存知ですか?NSTとは栄養サポートチーム(Nutrition Support Team)の略称で、患者さんを栄養面から支えるチームのこと。1970年ごろにアメリカで始まり、日本でも2000年頃から本格的に導入されるようになりました。
栄養状態は病気の治療上、基礎となるものです。栄養状態に問題のある患者さんに適切な栄養療法を実施することにより、栄養状態を改善・維持し、治療効果を高めることがNSTの目的です。あらかじめ栄養管理の必要がある患者さんを計画的にサポートするという考え方が生まれ、チームで患者さんの栄養を管理する栄養サポートチーム・NSTが誕生したのです。
当院では2001年、北陸で2番目にNSTを結成。全国でも早くその活動を開始しました。NSTは医師・管理栄養士・看護師・薬剤師といった多職種のメンバーで活動しています。さらに必要に応じて検査技師や理学療法士、歯科衛生士なども参画。これら職種がチームを組むことによって、患者さんの栄養状態を評価し、必要な栄養を適切な方法で補給し、治療につなげていきます。
「NSTのメリットは、患者さんの回復が早くなることです」と話すのは、NSTの中心メンバーである津田豪太医師。患者さんの栄養状態を良好に保つことは、治療面でも効果は大きいと、その有効性を語ります。
NSTでは、検査データなどに基づいて入院患者さんをスクリーニング。栄養サポートの必要性がある患者さんを洗い出します。NSTの対象となる患者さんは、1ヵ月あたり約70〜80人。その一人ひとりに対し、年齢・身長・体重、疾患などに基づく分析を行い、必要なエネルギーや栄養素を管理。早期回復・治療へとつなげていきます。
「入院時には問題がなくても手術や抗がん剤治療、放射線治療などの予定がある患者さんは、治療後、身体に負担がかかります。そういったリスクもあらかじめ読み取り、必要な栄養の量を算出し、サポート計画を立てていくのも私たちの仕事です」と話すのは、牧野尚恵管理栄養士。NSTの専従管理栄養士を務めるチームの主要メンバーです。
当院では体重の増減、食欲の状態などの項目をスコア化。当院の医療情報課が独自に開発したカロリー計算ソフトにより、データの集積・推移が一目でわかるようになっており、どのスタッフが担当しても均一なレベルで適切な栄養評価が行われるシステムを確立しています。
血液検査など各種データに基づいて患者さんの状態を評価。各チームメンバーが専門職の立場から意見を出し合い、今後の方針を決定します。
例えば栄養療法についての最新情報をもとに、噛む力や飲み込む力が弱い方のための食形態を調整したり、様々な特徴を持った製品もそろえています。患者さんのQOLを考慮し、よりよく栄養を摂取して頂けるよう工夫を重ねています。
NSTのサポート対象となる患者さんやそのご家族には、治療の方法や栄養計画についてあらかじめご説明します。栄養治療実施計画書には「飲み込みのリハビリをして、食べ物を飲み込めるようにする」「食べる量を増やして、点滴を減らす」など、その方の状態に応じた目標を設定。患者さん自身も目標を持って栄養治療に臨めるよう、チームが一丸となって進めていきます。入院後は1週間に一度、NSTのチームメンバーが患者さんのベッドサイドに訪れて患者さんの状態を確認。その後はチームメンバーでカンファレンスを行い、今後の栄養・治療計画を検討します。
チームで患者さんを回診し、病状のチェックや栄養治療の経過などをご説明します。
NSTはさまざまな疾患の患者さんを対象として活動するため、他のチームと連携して栄養サポートを行うことも少なくありません。
たとえば食べ物を飲み込みにくくなる嚥下障害を起こしている患者さんの場合には嚥下チームと連携。摂食・嚥下障害看護認定看護師など専門知識を持ったスタッフと協力しながら、患者さんの栄養状態をサポートしていきます。
その他にも緩和ケアチーム、褥瘡(床ずれ)ケアチーム、感染症対策チームなど患者さんの状態に応じて必要なチームと連携を図り、多角的なアプローチを行っています。
入院中から退院後につながる栄養サポートで治療・回復をめざすNST。診療の質を高めています。
受診について