肺がん

病状に応じて選択肢が広がる肺がん外科手術

傷や痛みを抑える手術で身体への負担を少なくする

痛みが少なく回復が早い胸腔鏡による手術

胸腔鏡による新手術法

 がん治療で最も根治性が高いのが外科手術です。なかでも最も多く行われているのが、「胸腔鏡下肺葉切除術」という術式です。これは胸部へ胸腔鏡と呼ばれるカメラ(内視鏡)を入れ、モニター画面に映る映像を見ながらがんのある肺葉を切除する手術法。肺葉とは肺を構成する単位で、右肺は上・中・下葉の3葉、左肺は上・下葉の2葉の計5葉にわかれています。肺葉切除術は、この5葉の中でがんが発生した肺葉を根元から切除。さらにその周囲のリンパ節を切除し、転移していないか調べます。
 胸腔鏡下肺葉切除術は胸部の数ヶ所に2〜4センチ程度の小さな傷を開け、そこから内視鏡や器具を挿入して手術を行います。胸を大きく切り開く必要がないので、元来の開胸手術と比べると痛みが少なく、術後の回復が早いのが大きな利点。手術の翌日から歩行や食事ができ、術後5日ほどで退院となります。
 胸腔鏡下肺葉切除術が適応となるのは、大きさが3センチ以下でリンパ節や他臓器への転移がない比較的早期のがんです。当院では2008年から胸腔鏡下肺葉切除術を開始し、今では肺がん手術の約8割を胸腔鏡下で実施。確かな手術実績を確立しています。

肺を小さく切って肺機能を温存する縮小手術も

がんが小さい場合や浸潤性・悪性度が低い場合には、肺を小さく切り取る「縮小手術」を行うことがあります。縮小手術には肺を切除する範囲によって「肺区域切除術」と「肺部分切除術」があります。
 縮小手術は、肺を少しでも多く残すことで肺機能の温存を図ります。一方、肺がんの手術の最も重要な目的は根治を目指すことで、そのためにはがんの部分を完全に取りきる必要があります。患者さんの負担が減ってもがんの取り残しがあっては、手術の意味がありません。縮小手術では、がんの取り残しによる局所再発(切除した部位の近くにがんが再発する)を避けるために、術前にがんの悪性度やリンパ節転移の有無などを的確に見極めることや、がんの部分から十分に離れたところで肺を切ることなどが大変重要で、細心の注意を払っています。
 縮小手術は肺機能を温存できるので、肺気腫を合併している人や高齢の人など、肺葉切除による呼吸の機能低下が懸念される場合にも選択肢となることがあります。

[図1]正面から見た肺葉切除術
患者さんは横向きの体勢に。胸に開けた穴から器具を入れて手術を行う。
患者さんは横向きの体勢に。胸に開けた穴から器具を入れて手術を行う。

拡大手術や抗がん剤併用など状態に応じて治療法選択

 がんが周囲の臓器や肋骨などに広がっている場合、標準手術の範囲と併せて合併切除を行うこともあります。これを「拡大手術」と呼んでいます。拡大手術は切除範囲が広いため、通常は開胸による手術となります。
 病状に応じて、手術と抗がん剤治療・放射線治療を組み合わせる方法も用いられます。がんが進行していて手術単独では治療効果が不十分な場合でも、抗がん剤治療や放射線治療と組み合わせることで治療効果を高めることができるケースもあります。また、手術後の病理検査の結果によっては、再発防止のために抗がん剤治療を行うこともあります( 補助化学療法)。  どの治療法を選択するかは、がんの状態はもちろん、患者さんの全身状態や既往歴、年齢などを加味して決定します。

肺がん手術の種類

  • 【肺葉切除術】5つのブロックに分かれた肺葉の中からがんのある肺葉を切除します。肺がんの手術で最も多く行われています。
  • 【肺全摘術】片方の肺をすべて切除する手術。がんが肺の根元にある場合などに行います。
  • 【縮小手術】がんとがんの周囲の肺を小さく切除します。がんが小さくリンパ節転移がないなど一定の条件を満たした場合に適応となります。肺機能を温存できます。
  • 【拡大手術】がんが周囲の臓器や骨などに浸潤している場合に、肺と一緒に切除します。

肺がん手術の手法

  • 【完全胸腔鏡下手術】内視鏡主体で行う手術。傷が小さく、痛みも少なく、術後の回復も早くなります。
  • 【胸腔鏡補助下手術】小さく開胸し胸腔鏡を併用する手術。肉眼とカメラの両方で胸の中を見て手術を行います。
  • 【開胸手術】胸を開いて行う手術。がんが大きい場合や進行している場合、手術範囲が広い拡大手術などで行います。
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