【健康】気づいた時にはもう遅い⁉耳の健康を守りましょう
「ヘッドホン・イヤホン難聴」を知っていますか。ヘッドホンやイヤホンで大きな音を長時間聞くことによって起こる難聴が「ヘッドホン・イヤホン難聴」です。スマートフォンや携帯型音楽プレーヤーの普及に伴って、ヘッドホンやイヤホンで音楽を聞く人が増えています。これらの機器を使う習慣がある人は、注意が必要です。少しずつ進行していくため、初期には自覚しにくく、とはいえ失った聴覚は戻りません。そのため、大きすぎる音量で聞かない、長時間連続して聞かずに定期的に耳を休ませるなどの予防が重要です。
ヘッドホン・イヤホン難聴とは
ヘッドホン・イヤホン難聴とは俗称で、正式には「音響性聴器障害」や「騒音性難聴」といいます。これまでは建設現場や工場での機械音・工事音など騒音を伴う職場で働いている人にみられていました。しかし、今後はヘッドホンやイヤホンからの音が原因で発症する人が増加するのではないかと懸念されています。
WHO(世界保健機関)では、世界の若者(12~35歳)のほぼ半数にあたる11億人が、個人用オーディオ機器、バー、音楽イベントなどによる難聴のリスクにさらされているとして警鐘を鳴らしています。
この病気が恐ろしい点は、「気づきにくい」ということです。じわじわと進行し、少しずつ両方の耳の聞こえが悪くなっていくため、初期には難聴を自覚しにくいことが特徴です。
ヘッドホン・イヤホン難聴の原因
難聴は音が耳から入って脳に伝わる経路で障害が生じて起こる病気です。聞こえづらい、耳が詰まった感じがする(耳閉感)、耳鳴りがする、などの症状が現れます。耳は、外耳・中耳・内耳の3つに分類され、どこが悪くなっても難聴になります。中でも難聴の原因として最も多いのが、内耳の蝸牛(かぎゅう)と呼ばれる器官の障害です。加齢性難聴、突発性難聴、メニエール病などは蝸牛の障害によって引き起こされますが、ヘッドホン・イヤホン難聴も蝸牛の障害で起こる難聴です。
蝸牛の内部には「有毛細胞」という細胞があり、外からの音の刺激を電気信号に変えて脳に伝えています。この有毛細胞が加齢や騒音などで損傷すると、音を感じ取りにくくなり難聴になります。なお、壊れてしまった有毛細胞は再生しません。WHOでは80㏈で1週間あたり40時間以上、90㏈で1週間あたり4時間以上聞き続けると、難聴の危険があるとしています。また、100㏈以上の大音響では急に難聴が生じることもあります。
特にヘッドホンやイヤホンは耳の中に直接音が入るため、周囲に音漏れするほどの大きな音で聞いていたり、長時間聞き続けたりすると難聴が起こる可能性があります。誰もが年齢とともに耳の機能が劣化していきますが、ヘッドホン・イヤホン難聴はその劣化を加速させてしまうのです。
ヘッドホン・イヤホン難聴の治療
有毛細胞が壊れる前であれば、耳の安静を図ることで回復します。そのため、初期には耳栓を使う、定期的に耳を休ませるといった指導が行われます。しかし、先述のとおり、難聴は蝸牛の有毛細胞が壊れることで起こりますが、有毛細胞が一度壊れると再生しません。失われた聴力は戻ることはなく、難聴を改善するには補聴器を使う以外に手段はありません。
ヘッドホン・イヤホン難聴の予防
WHOでは、ヘッドホンやイヤホンで音楽などを聞くときには、耳の健康を守るために、以下のようなことを推奨しています。
・音量を下げたり、連続して聞かずに休憩を挟む
・大きな音を聞く時間を減らす
(ヘッドホンやイヤホンで音装着時は80㏈(走行中の電車内くらいの音量)を1週間に40時間までを目安する、1日にすると約5時間)
・騒音下でも音量を上げずに済むように、ぴったりとフィットした「ノイズキャンセリング機構」により周囲の騒音をカットできるヘッドホンや
イヤホンを使用する
・音量制限や監視機能のついたスマートフォン・ヘッドホンなどを使うか、音量を確認できるアプリなどを使用し、平均80㏈未満に抑える
症状が悪化してから後悔しないように、しっかりと予防して耳の健康を守りましょう。
参考文献
・厚生労働省.〈健康日本21アクション支援システム~健康づくりサポートネット~〉
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/sensory-organ/s-002 (参照 2025.8.14)