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膝・股関節外科外来
【変形性膝関節症(OA)】
膝の関節は大腿骨と脛骨、そして膝蓋骨(お皿の骨)から関節が形成されております。その関節の表面には軟骨が存在し、クッションの役割と関節をスムーズに動かす働きを担っております。
加齢による変化に体重増加や重労働などによる膝への負担、O脚変形等の要因が加わり、徐々に軟骨がすり減っていくと、関節は変形し、痛み等の症状が出現します。日本人ではもともとO脚の傾向にあるため、膝の内側に荷重がかかり、内側の軟骨がする減り、さらに内側に負荷がかかるという悪循環で変形性関節症(OAと略します)が進行していきます。内側の変形が主体の内側型(O脚)と外側が主体の外側型(欧米に多く、X脚といわれる)と内外側とも変形するタイプに分けられます。
変形性関節症は女性に多く、40代後半より徐々に患者数が増加し、60歳以上では女性の4割に認められるとも言われております。今後さらに高齢化がすすみ、ますます増える傾向にあります。

【保存的治療法】
初期には痛みの強いときには痛み止めの薬やシップ等にて痛みと炎症の軽減をはかります。また、ヒアルロン酸の注射も有効な方法ですが、痛み止めの注射ではないため、すぐに効果が現れるものではなく、5〜10回くらい続ける必要があります。
関節の進行を少しでも抑えるために大腿四頭筋訓練(ももの筋を鍛える訓練)や体重のコントロール等の患者さん自身の努力も必要となります。また長時間の歩行や階段昇降、正座なども出来るだけ避けたほうがよいと思われます。しかし、関節の変形が進行すると手術以外に有効な治療法がないのが現状です。
将来的には軟骨の損傷を修復あるいは進行させない薬の開発が待たれるところです(現在、健康食品として巷をにぎわせているグルコサミンなどの効果はまだ認められておりません)。

【関節鏡視下手術】
関節鏡という内視鏡のカメラを膝関節内に挿入(約1cmの創、2〜3箇所)し、テレビのモニターを見ながら関節内を観察し、同時に手術も行います。関節内の軟骨、半月板、靭帯などの状態を観察し、半月板の損傷があれば半月板切除術、滑膜炎が認められれば滑膜切除術を行います。また、直視下に軟骨の状態の評価(OAの有無や程度)もできますが、OAによる軟骨の損傷に対しては例外を除いて関節鏡視下手術で有効な治療法は現在のところありません。
麻酔は通常腰椎麻酔(下半身麻酔)で行い、1時間くらいの手術です。関節鏡クリニカルパスという入院治療計画に沿って行い、入院期間は1週間以内です。
内側半月板損傷 半月板切除後
内側半月板損傷 半月板切除後
 
軟骨の摩耗象 軟骨が欠損し、骨が露出
軟骨の摩耗象 軟骨が欠損し、骨が露出
高位脛骨骨切り術(HTO) 日本人はもともとO脚の傾向にあるため、内側の変形が主体の内側型(O脚)が大部分を占めます。脛骨(すねの骨)近位部で骨切を行い、外側に傾ける手術(外反、X脚にする)です。X脚にする事によって体重のかかる場所を膝の内側から外側に移動させる手術です。
したがって、外側の軟骨がまだ残っている人に可能な手術です。
手術の方法には外側の骨を三角形に切り取って外側を縮める方法や内側を骨きりし、広げる方法などがあります。固定の仕方にはプレートを用いる方法や創外固定を用いる方法があります。
特にこの方法は60歳以下の若い方やや活動性の高い(重労働も含む)人に行われる手術です。しかし、10年後の成績は人工関節より悪いという報告もあり、いずれ人工関節に置換する人も少なくありません。その際の手術は人工関節から人工関節への入れ替えの手術よりむしろ難しいともいわれております。
軟骨の摩耗象 軟骨の摩耗象 軟骨の摩耗象
内側の軟骨は欠損し、骨が露出している。
内側を青線のように骨きりし、内側を広げて間に人工骨を挟んだ後、プレート固定。
【人工関節置換術】
人工関節には関節全体を置換する全置換術(TKA)と内側あるいは外側の悪い関節側だけを置換する片側型置換術(UKA)の2種類があります。

【人工膝関節片側型置換術(UKA)】
先ほども述べましたが日本人では内側の変形が主体の内側型(O脚)が大部分を占めますので内側を置換する場合がほとんどです。ただしこの方法は、内側型のOAで、外側の軟骨が温存されているのは当然ですが、前十字じん帯の機能が働いていることや内反変形が15度以内などを満たすことが条件です。
人工膝関節全置換術(TKA)と比べると出血量が少なく、回復は早く、膝も曲がりやすくなるなど有利な点がある反面、技術的に手術が難しいといわれております。
片側型人工関節(UKA)クリニカルパスを用いて入院期間は約2週間です。
内側型OA 内側型OA 軟骨片側型人工関節 片側型人工関節
内側型OAに対して片側型人工関節(UKA)を施行。
【人工膝関節全置換術(TKA)】
軟骨が徐々にすり減り、最後には軟骨が消失し、骨と骨が擦れあうようになった状態を末期の変形性膝関節症といいます。現在の医学では軟骨が磨り減ってしまうとそれを再生させたり、修復させることはできません。末期の状態では人工関節以外に有効な治療法がないのが現状です。
人工膝関節全置換術(TKA)は通常は60歳以上のかたにおこなっておりますが、関節リウマチの場合には若年者でも高度の関節破壊が生じることが少なくないため、20歳代や30歳代で行うこともあります。
80〜90%の人は人工関節が10年後もうまく機能しておりますが、残りの人は入れ替えが必要になります。その原因には感染、人工関節の緩み、骨融解(骨が解けてくる)などが上げられます。このような場合には人工関節の抜去や再置換(入れ替え)が必要になることも少なくありません。放置するとどんどん進行し、手術がさらに困難になります。(下写真)
またすべての手術についていえることですが、手術後の合併症として下肢静脈血栓症(足の静脈に血栓が生じる)と肺塞栓症(足にできた血栓が流れて肺に詰まる)が最近大きな問題となってきております。それに対して早期離床、ストッキングの着用や足の裏から血行をよくする機械の装着など対策を行っておりますが、完全に予防することはできません。また最近、アリクストラという血栓予防の薬が認可され、人工関節の際には使用しております。
内側の軟骨が高度に欠損 高度の内反変形 人工膝関節全置換術
高度の内反変形に対して人工膝関節全置換術(TKA)施行。
内側の軟骨は高度に欠損している(左:関節鏡所見)。
人工関節の緩みなど 人工関節周囲の骨融解像など 手術中の写真

工関節のプラスチックの磨り減り
人工関節の再置換術
人工関節の緩み、人工関節周囲の骨融解像(骨が解けている)を認める。
手術中の写真:人工関節のプラスチックが磨り減っているのがわかる。
人工関節の再置換術(入れ替えの手術)を行った。
人工関節の緩みなど 関節内が黒くなっている

人工関節の金属とプラスチックの磨り減り

人工関節の金属とプラスチックの磨り減り
人工関節の再置換術
人工関節の緩み、人工関節の亜脱臼(ずれている)、人工関節周囲の骨融解像(骨が解けている)、そして白くもやもやした影(矢印で示す部分)を認める。
手術中の写真:関節内が黒くなっている(金属が磨り減って金属粉が関節内に蓄積している)、人工関節の金属とプラスチックが磨り減っているのがわかる。
人工関節の再置換術(入れ替えの手術)を行った。
【前十字靱帯損傷(ACL)】
前十字靱帯は膝関節の中央にあり、脛骨の前方へのずれや、膝の回旋方向へのずれを防ぐ役割をしている重要な靱帯です。スポーツ(バスケットボール、サッカー、スキーなど)などで膝を捻った際に受傷することが多く、損傷すると腫れて痛みを伴い、関節内に血液がたまります。
受傷後、関節の不安定性により、膝がガクっと外れたような感じがし、スポーツや仕事に支障を生じるばかりでなく、日常生活にも不都合を感じる場合も少なくありません。簡単に膝が外れるような症状が出現し、膝に血がたまるような怪我を繰り返します。そのたびに、膝の関節軟骨や半月板を損傷し、最終的には変形性膝関節症になってしまいます。

ACL損傷の治療は保存的治療と手術的治療があります。
ギプスや装具による保存的治療によって治癒する場合もあるとの報告があり、当院においてはまず3ヶ月間装具による保存的治療を行うこととしております。ほとんどの症例で膝関節の不安定性が残存しますが、不安定性がごく軽度であったり、膝が外れるような感じや不安感をまったく感じない人にはそのまま保存的に経過を診ていける場合もあります。(当然、年齢やスポーツ、労働を考慮して手術を行う場合もあります)。実際、プロのスポーツ選手でも靭帯が断裂していてもほとんど支障なくプロスポーツをしている人もおられます。
不安定性があり、膝が外れるような感じや不安感を覚える人には靱帯再建術が必要になります。手術方法にはいくつかの方法があり、用いる靭帯材料にも自分の組織を用いる方法と人工靭帯を用いる方法がありますが、現在は自分の靭帯を用いるのが主流です。当院においては主に膝蓋靭帯を用いて再建を行っております。入院期間は約2週間です。術後のリハビリは非常に重要で、退院後は通院または自宅でのリハビリを続けていただきます。約6ヶ月の競技復帰を目標としていますが、筋力が十分に回復しない場合には再断裂の危険性もあり、無理をさせないようししています。
前十字靭帯が断裂している 靭帯再建術後 1年後の靭帯の状態
前十字靭帯が断裂している 靭帯再建術後 1年後の靭帯の状態
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