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肛門・ヘルニアグループに関するQ&A
肛門・ヘルニアグループに多く寄せられた質問をまとめました。
ご参考にしてください。
Q1: 最近、痔の手術で痛みが少なく、入院日数が少なく、早く仕事にも行けるPPHという方法があると聞きましたが、どのような方法ですか? ≫
Q2: 最近痔瘻の手術を受けましたが、手術のあともウミが出るのがなおらず、また、手術のあと肛門のしまりも悪くなり、便がもれやすくなりました。痔瘻とはなおりにくいやっかいな病気ですか? ≫
Q3: 最近、排便時や、立ったり歩いたりすると、肛門の奥から何か出てくるようになりました。歩いていると出てくるので歩きにくく、また下着が粘液や血でよく汚れます。どのような病気が考えられるでしょうか?また、薬では直らず手術が必要な場合、高齢でも手術はできるでしょうか? ≫
Q4: 直腸ガンのため人工肛門の手術を受けなければならないと言われました。人工肛門とはどういうものですか?また人工肛門を作らないですむ直腸ガンの手術はないものでしょうか? ≫
 ひとくちに痔と言ってもいろいろな種類があります。痔の中で最も多いものが内痔核とよばれるものです。内痔核とは肛門の中の静脈がふくらんだものを言います。

【内痔核の症状】
 内痔核にも症状の軽いものより重症のものまでいろいろと程度があります。その程度によりT〜W度まで4段階に分けられています。最も軽いものは、肛門の中で静脈がふくらんでいて、時々出血するものです(内痔核T度)(図1)。もっと大きくなると、排便時に一緒に肛門の外へ出てきますが(脱出)、自然と中へ戻っていきます(内痔核U度)。さらに大きくなると、排便時に外へ出てきて指で押しこまなければ中に入らないようになります(内痔核V度)(図2)。長い間たっていたり、歩行時に出てきたり、しゃがんだだけででてくる方もおられます。脱出すると違和感があり痛みもあり大変具合が悪いものです。さらにひどくなると中へ押しこんでもすぐ外へ出てきて、いつも外に出ている状態となります(内痔核W度)。
内痔核T度 内痔核V度
図1 図2
【治療】
 内痔核の治療としては、T度の内痔核に対しては便秘を避けるなど生活に注意をし、出血している時は坐薬、軟膏を入れたり、お薬を飲んだりします。T度の内痔核は、おくすり等の保存的治療をしていれば、たいていの場合出血はとまります。U度の内痔核もおくすりで治療しますが、よくならない場合は手術を行なう場合もあります。
 V度、W度の内痔核は、座薬などの薬ではほとんどの場合なおりません。排便のたびごとに脱出したり、歩行時に脱出して具合が悪いし、どうしてもなおしたいと思われる場合はあとは手術しかありません。またT度やU度の内痔核の場合でおくすりで治療していてもきかずに、まれに出血が多くて貧血となる場合があります。このような場合も手術が必要となります。手術の方法としては大きく分けて以下に示しますように4つの方法があります。
【手術の方法】
  1. 輪ゴム結紮(けっさつ)術:外来で治療が可能。
  2. 硬化療法:薬剤を内痔核に注射して小さくする方法です。
  3. 結紮(けっさつ)切除術:古くから広く行われている手術法。
  4. PPH(直腸粘膜環状切除術):先進医療として厚生労働省が認定している新しい手術方法です。
輪ゴム結紮術は入院せずに外来でおこなうことができますが、他は入院が必要です。

1.輪ゴム結紮術(図3
輪ゴム結紮術
図3
 器械を用いて内痔核に特殊な輪ゴムをかけてくさらせておとす方法です。入院せずに外来で治療することができます。麻酔なしで行います。輪ゴムをかけるだけなので一瞬で終わります。痛みの感じる神経のある部分まで輪ゴムがかかることが多いため、術後はある程度の痛みがあります。痛み止めのお薬をのんでいただきますが、この痛みは3日ほどすれば楽になります。輪ゴムをかけた内痔核は血液が来なくなり次第にちぢんで小さくなり腐っていき3〜14日後に脱落します。くさって落ちた後にはキズができます。このキズは次第に皮がはって約一ヶ月かけてなおっていきます。
 私達は原則として1回に1箇所の内痔核しか輪ゴムをかけない方がよいと考えていますので、2個3個と内痔核がたくさんある方で一回で直してほしいと思っておられる方はできません。またあまりにも内痔核が大きい場合には輪ゴムがかかりませんのでこの方法ではできません。
 再発率は意外と少なく、私達は平成1年12月15日より平成19年3月31日までの間に138人の内痔核の方に行いましたが再発された方は6人(4.4%)だけでした。入院できなくて外来で治療することを希望される方にはよい方法と思われます。保険でも認められている方法です。
 ただはじめて外来に来られたその日にはできません。一回診察をさせていただいてから後日外来に来ていただき、手術室で輪ゴム結紮術を行なうこととなります。
2.硬化療法
 内痔核にお薬を注射して内痔核を小さくする方法です。ジオンやパオスクレーというお薬を用います。ジオンというお薬を注射する方法は平成17年3月より行われるようになってきた新しい方法です。保険にも通っている方法です。ものを取ってくるのではなく、注射をするだけですからキズは全くできず手術のあとの痛みは4つの方法の中では一番軽く、注射をした翌日ないし翌翌日には退院する事ができます。注射のあとは肛門のはれぼったい感じや、軽い痛みがあります。全入院日数は3〜4日間です。退院後仕事はすぐにでも行くことができます。
 問題点としては、薬だのみの方法ですので薬がきかない人と逆に薬がききすぎる人がいることです。したがって、欠点としては9割の方は脱出がなくなりますが、1割程度の方は薬のききがわるいため注射をしたあともあいかわらず排便時に脱出をみとめます。
 また脱出がいったんよくなった方でも1年後に約1〜2割(16%)の方が再発して脱出をきたすと報告されており、これも欠点です。
 肝臓が悪いことなどの理由で出血しやすい方で、手術するには手術の後の出血が心配な方でもこの方法で治療することができます。しかし腎臓のはたらきの悪い方にはこのジオンは使うことができません。
3.結紮(けっさつ)切除術
 これは昔から行なわれている方法です。内痔核に流れ込んでいる動脈をしばり(結紮(けっさつ)し)内痔核そのものを取ってくる(切除する)方法です。脱出する内痔核そのものを取ってしまうため、最も確実な方法です。
 切除後はキズができます。私達はキズは縫わずに開放としています。私達の経験ではそのほうが痛みが軽いからです。通常、肛門には奥より3本動脈が流れ込んでおり、この3本の動脈の流域に内痔核はできてきます。このため3箇所動脈をしばり3箇所内痔核を切除します。
 保険でも認められている方法です。
 残った小さい内痔核(副痔核)がまた大きくなって再発する場合がまれにありますが、現在行なわれている内痔核の手術の中では最も再発の少ない方法です。
 欠点としては、比較的大きなキズが肛門の外から中にかけて3箇所できるため、排便の時や排便の後が痛いという事があります。痛みは個人差があり程度は色々です。かなり痛いという人もおれば大した事はないという人もいます。一般的には痛みに敏感な若い方は痛みを強く訴えられますが、御高齢の方は痛みが少ないように思われます。
 当院では術後は異常なければ4日目に退院して頂いています。全入院日数は6〜7日間です。術後10〜14日ほどするとキズに肉が盛り上り、痛みはかなり楽になってきます。手術後、痛みが軽くなり、仕事にいけるのは術後約10日〜14日以後です。
 術後2週間は、重いものを持ったり、アルコールを飲んだり、あまりにも強くいきんだりすると大量に出血して再び入院しなければならない場合がありますので、術後2週間は先に述べましたことは避けるようにしてください。術後2週間をすぎれば、たくさん出血する心配はまずなくなります。
 キズに完全に皮がはると縫ったみたいに1本の線になります。完全に皮がはるまでに約1ヶ月以上かかります。それまではウミがガーゼにつきます。完全に皮がはればウミはつかなくなります。
4.PPH(直腸粘膜環状切除術)
 この方法は内痔核のある肛門には全くさわらずに肛門の奥の直腸の粘膜と粘膜の下の組織を環状に3〜4cm切除して縫合する方法です。これを器械を用いて一度に行なってしまいます。粘膜および粘膜の下の組織を3〜4cm切除し縫合する事により、外に脱出する内痔核を奥に引っ張り込むことになります。これにより排便時に脱出する事はなくなります。また肛門の奥の直腸に、縫合したキズができますが、このキズより下には血液がいかなくなります。血液がいかなくなると内痔核が次第次第にしぼんでいきます。3ヶ月から1年ほどかけてだんだんとしぼんでいくといわれています。要するに
  • 内痔核を奥へ引っ張り込む事と
  • 血流をこないようにする事で内痔核をなおそうとする方法です。
図1
図1
図2
図2
図3
図3
図4
図4
図5
図5
 肛門には全くキズができません。また直腸にはキズはできますが、直腸の粘膜には痛みを感じる神経がないため、手術のあとの痛みは軽く、早く退院できます。手術の翌日でも排便があり異常なければ退院可能です。平均的には術後3日目に退院されます。全入院日数は平均5日間です。
 また早く仕事に行くこともできます。退院した翌日より会社に行って軽い仕事をしている方が多いようです。しかし重いものを持ったりする仕事は術後2週間は避けてください。結紮切除術と同じように術後2週間は大量に出血することがあるからです。その他術後2週間はアルコールを飲んだり、自転車に乗ったり、あまりにも強くいきんだりすると出血して再び入院しなければならない場合がありますのでこれらの事は控えてください。
 PPHは1993年頃よりヨーロッパで始められ、現在ヨーロッパでは広く行なわれており主流の手術となっていますが、日本ではまだ1部の病院でしか行われておりません。
 しかし、痛みが少なく、患者さんに大変喜ばれる、先進的な手術であるためPPHは先進医療として厚生労働省に認定されました。平成20年4月よりPPHは先進医療として認定された病院以外でも行ってもよい事になりました。
PPHの欠点としては
  • 非常に大きな内痔核などの場合は、まれに普通の大きさの内痔核でもPPHで奥に引っ張り込んでも顔を出す場合が時にあること(この場合多くは時間がたてばしぼんで顔を出さなくなります。)
  • 内痔核そのものをとってしまうわけではないため結紮切除術と比べると若干再発率は高い事などがあります。万が一再発した場合ほとんどは、先に述べました輪ゴム結紮術を外来で行なってなおすことができます。
入院手術に要する費用に関しては
 結紮切除術は6日間の入院の場合保険がきき3割負担で約7万5千円の費用がかかります。PPHは平成20年4月より保険で認められるようになり、5日間の入院で手術費は約7万円かかります。
 PPHの長所としては先ほど述べましたように
  • 手術の後の痛みが軽い
  • 早く退院できる
  • 早く仕事に行ける
  • 入院期間が短いため、結紮切除術と比べると費用(入院費)が安くて済む等があります。
 私達の病院では平成12年1月1日より平成20年3月31日現在までの間に493人の方がこのPPHの手術をうけられました。PPHは最近03と言う新しい機種に変わりましたが、そうなってからの再発例は現在までのところ1人もありません。
 排便後に出てくる脱出は患者さんにとって大変具合が悪く、旅行にも行けないといっている方もおられます。長い間脱出で悩んでこられ手術を受けられた方は、こんなんだったらもっと早くすればよかったといっておられる方がよくおられます。また、手術を受けたあと脱出がなくなり人生が変わったとまで言って喜んでおられる方もいました。脱出で悩んでおられる方には、手術をお勧めします。
 以上述べてきましたように内痔核の手術には4つの手術方法があります。それぞれ長所短所があります。私達は患者さんが希望する方法を行う様にしています。
(担当 消化器大腸肛門科 飯田 善郎 外科部長)
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痔瘻
図4
 痔瘻とは、肛門の中に小さな穴(原発口)があり、肛門の外にも穴(2次口)があり、この間が管(クダ)でつながっている病気です。(図4)御指摘のごとく痔瘻は肛門の病気の中では最もやっかいな病気と考えられています。その理由として、ひとつは手術しても治らないことが多い、ということがあげられます。そしてもうひとつは痔瘻のクダは肛門括約筋(肛門をしめる筋肉)の中を走っているため、手術により括約筋を傷つけると失禁(便が垂れ流しになること)の危険があるからです。
 手術しても治らない原因の1つとしては痔瘻のクダの1部が取り残されている場合があります。つまり痔瘻の手術は取り残すと手術しても治らないし、取りすぎると肛門のしまりが悪くなるという事で、肛門の手術の中で最も気を使う手術といって良いでしょう。
 私達はこの最も気を使う痔瘻に対しては、独自に考案した肛門上皮開放下・瘻管全摘・括約筋間縫合術(開放くりぬき術)を行っております。この方法は痔瘻が確実に治り、また術後失禁をきたさない秀れた方法と考えています。

【痔瘻の症状】
1.排膿
肛門の中の穴(原発口)から便の中のバイ菌が入り、クダの中で繁殖してウミがたまってくると外の穴よりウミが出てきます。下着がウミや血で汚れるようになります。またウミのにおいがして不愉快な思いをします。
2.肛門のはれ、痛み
肛門の外の穴(2次口)がふさがってしまった場合は、クダの中でウミがどんどんとたまってきて肛門がはれて痛くなります。
3.発熱
ウミがたまってウミの行き場所がなくなってくると熱が出たりすることもあります。そしてウミが外へ出ると痛みがなくなりはれもとれ熱もなくなります。
また長い間放置するとまれにガン(痔瘻ガン)になる場合があります。
【痔瘻の治療】
 痔瘻は薬では治らず治療は手術しかありません。
 手術方法としては大体以下のような方法があります。
1.シートン法
 痔瘻のクダに沿って外の穴より肛門の中の穴に向かいゴムひもやペンローズドレーンと呼ばれる柔らかいクダ(シートン)を入れる方法です。クダにそってウミが外へ排泄されます。クダは異物であるため、自然と外へ出されようとしますので、時間がたつとシートンが外へ出されて痔瘻も直ります。なかなかとれない場合は、少しづつゴムひもを締めていくと組織が少しづつ切れていき、最後にはゴムひもがとれキズもなおり痔瘻も直ります。
 クローン病という腸にキズができたり腸が狭くなる病気があります。時にこのクローン病が原因で痔瘻ができるばあいがあります。クローン病が原因の痔瘻は普通の痔瘻の手術では直りにくいことが多いために、おもにこの方法を行っています。入院せず外来でできる場合もあります。
*クシャラスートラを用いたシートン法
これはインドで作られたクシャラスートラと呼ばれる、薬をしみこませた糸を用いておこなうシートン法です。
2.切開開放術
痔瘻のクダに沿ってメスを入れ、痔瘻を括約筋とともにメスで切って開放する方法です。最も確実で直りやすい方法といわれています。しかし括約筋が切れてしまうため、切る部位によっては、肛門のしまりが弱くなったり、便がもれてしまう場合があります。ひどい場合は便が垂れ流しになったりする場合があります。
3.くりぬき術(肛門括約筋温存手術)
肛門をしめる筋肉(括約筋)は切らずに痔瘻のクダだけをくりぬいて取ってしまう方法です。括約筋は、あまり傷つけられないため、手術の後の肛門のしまりは切開開放術と比べるとよく保たれます。しかし切開開放術と比べるとせっかく手術をしてもなおらない方がかなりおられます。くりぬき術を行っても4人のうち1人はなおらないという報告もあります
4.開放くりぬき術(肛門上皮開放下・瘻管全摘・括約筋間縫合術)(肛門括約筋温存手術)
私達が独自に考案した方法です。切開開放術とくりぬき術の両者の長所を取り入れた方法と考えております。
この方法は括約筋は切らずに温存し痔瘻のクダだけをくりぬいてくる点はくりぬき術と同じですが、痔瘻の入口である中の穴(原発口)を肛門の中の粘膜(肛門上皮)とともに切除し、キズを縫わずに開放しておく方法です。こうする事により切開開放術と同等の良い手術成績が得られ、かつ肛門のしまりも良く保たれます。
平成16年8月31日現在、225名の方がこの手術を受けられましたが、なおらなかった方は9名(3.1%)だけでした。なおらない場合、シートン法などの外来処置でなおすことができる場合もあります。また、このようになおらなかった方は昔に手術を受けられた方で、最近では手術をしてもこのようになおらない方はほとんどおられません。
手術を受けられた方のアンケート調査でも、便がもれて日常生活に支障をきたしている方は1人もおられませんでした。
術後は痛みが強くなければ2日間で退院する事ができます。
御質問者の場合も、手術よりあまり時間があまり経過していなければ、なおる途中経過かもわかりませんが、手術して3ヶ月以上たっているのに、まだウミが出るようでしたら痔瘻の1部が残っている可能性があります。専門医の受診をお勧めします。
(担当 消化器大腸肛門科 飯田 善郎 外科部長)
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 お話をお伺いして考えられる病気としては、別の項で述べました内痔核も考えられますが、むしろ直腸脱のほうが考えられます。
 直腸脱とは肛門の奥の直腸が外へ出てくる病気です。直腸脱のかたはすべて肛門のしまりがゆるく、この肛門のしまりがゆるいことがひとつのおもなる原因と考えられます。
 直腸脱は、時に若い方にも見られますが、普通、御高齢の女性に多くみられます。
【直腸脱の症状】
1.脱出 直腸脱
図5
肛門の奥の直腸などの腸が肛門の外へ出てきます。(図5)出てくると違和感があり、時に痛みも感じます。肛門のしまりがゆるいために、でてきた直腸を中に入れてもまたすぐ出てきます。ひどい場合は、歩くとすぐ出てくるため、歩けずいつも寝てばかりいて、かなり行動が制限される方もおられます。これは御本人にとり、生活の質が落ち、大変具合が悪いようです。そのため、どんなに御高齢の方でも手術を希望されます。
2.便失禁
肛門のしまりがゆるいため、便が我慢できずに出てしまう場合があります。
3.下着の汚れ
直腸などの腸が肛門の外へ出てくるため、下着が粘液で汚れたり直腸が下着とこすれてキズができ出血をきたしたりします。
【直腸脱の治療】
 直腸脱はどんなおくすりをのんでも、つけてもなおりません。なおそうと思ったら手術しかありません。手術もいろいろな方法があり、現在100種類以上の手術があると言われています。これだけたくさんの種類の手術があると言うことは、逆にいうと決定的に良い手術方法がないという事です。
 大きく分けると、おなかを切って直腸をおなかの中にひっぱりこむ方法とおなかは切らずにおしりの方から行なう手術があります。
 おしりの方から行なう手術にもいろいろあり、出ている直腸を取ってしまって、残った大腸と肛門を縫い合わせる方法(アルテマイヤー法)、出ている直腸の粘膜だけをはいでとってしまい直腸の筋肉をぬいちぢめる方法(デロルメ法)、それに私達が行なっている経肛門的直腸縫縮・肛門輪縫縮術(ガント・三輪・ティールシュ法)があります。
 ガント・三輪・ティールシュ法とは、ガント先生、三輪先生、ティールシュ先生の3人の先生方が考えた方法です。直腸を取ってしまったり粘膜をはぎとったりはせずに、直腸の粘膜を器具ではさみこれを糸で結んで、結節(イボ)を作ります。このようなイボを直腸粘膜全体的に作っていきます。こうすることにより直腸は自然にちぢめられて、中に入っていきます。 これだけでは肛門のゆるい状態はそのままであるため、また再発する可能性があります。そこでゆるい肛門のまわりの皮膚の下に糸を入れて、肛門を正常の太さにまで縮めてやります。
 これがガント・三輪・ティールシュ法です。たくさんある直腸脱の手術方法の中では、最も患者さんにとって負担の少ない方法の1つとかんがえています。
 麻酔は普通、脊椎麻酔と言って腰より針を刺す下半身麻酔で行ないますが、この脊椎麻酔をかけるのも心配な御高齢の方は直腸をぬいちぢめる時は麻酔なしで、ゆるい肛門をちぢめる時だけ局所麻酔で行なうこともできます。直腸は、痛みを感じる神経がないため、直腸をぬいちぢめる時は麻酔なしでできるからです。
 手術の前日に入院していただき、手術の後4日目頃に退院して頂きますので全体で約6日間の入院となります。
 昭和61年8月7日より平成20年1月31日現在までの間に148人の方がこの手術をうけられました。年令は25才より94才に及び平均年令は74才でした。男性の方は27人(18%)女性121人(82%)でありやはり多くは高齢の女性の方でした。
 ガント・三輪・ティールシュ法は、一般的には再発が多いと言われていますが、私達の手術した患者さんでは再発は2.7%と再発率は比較的少ない結果でした。
 患者さんにも大変喜ばれ、中には手術の前には、すぐに脱出してくるため、家の中で寝てばかりいたが、手術の後は出てこないのでどんどん外を歩けるようになったと喜んでおられる方もおられました。やはり御高齢の方でも悩んでおられるようでしたら、生活の質をあげるためには手術をしてあげたほうが良いものと考えています。
(担当 消化器大腸肛門科 飯田 善郎 外科部長)
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よりわかりやすく御説明するために順を追ってお話していきましょう。

1.人工肛門とは?
 人工肛門とは、腸の1部をおなかの外へ持ってきて、穴をあけて、おなかから便が出るようにしたものを言います。人工肛門という言葉をはじめて聞かれた方の中には、人工的な器具が腸の1部についているように思われる方もおられるかもしれませんが、腸の1部になにか人工的なものをつけるわけではありません。
 また人工肛門というと、普通の肛門のようにしまりがあるように思われる方がおられるかも知れませんが、実際は普通の肛門のように、便が出ない時にしまっていることはありません。腸が動いて便が送られてくると、しまりがないため、便はためられずそのまま外へ出てきます。そのため、普通は専用の袋をおなかに当てておかなければなりません。人工肛門からは1日1〜数回、便が出てきます。
 人工肛門は精神的にも絶対にイヤだという人工肛門に対する嫌悪感をお持ちの方が多いように思われます。寝ているときや公共の場で、人工肛門にはった袋がはずれて衣服が便でよごれ、周りにも臭気が漂いひどい目にあって以来、人前に出るのがおっくうになったという話や、においについて神経質になりすぎて家族に対して余計な気づかいをしてしまう方の話も聞きました。
 しかし、人工肛門の手術を受けても、普段の生活にはまったく支障はありません。入浴、旅行も普通にすることができます。人工肛門をそれほど気にせずに、運命として受け入れ、会社の社長さん、俳優さんなど社会でバリバリと活躍しておられる方もたくさんおられます。
 アメリカでは人工肛門に対する拒否反応は少ないようです。イギリスにセントマークス病院という伝統ある大腸肛門の専門病院があります。世界各国から大腸肛門病学を志す医者が集まり研修を受けていますが、ここでも人工肛門はヨーロッパにおいて、問題なく受け入れられているとのことでした。
 しかし、日本人は、その国民性からでしょうか、人工肛門だけはごめんだ、精神的にも絶対にイヤだ、という人工肛門に対する嫌悪感をお持ちの方が多いように思われます。
 いつもおなかに袋を下げているのを避ける方法として洗腸法を行うこともできます。これは微温湯を人工肛門より入れて大腸の中の便を強制的に出してしまう方法です。これを1〜3日に1回行えば、その間人工肛門より便が出てくることはなく、ガーゼを人工肛門に1枚当てておくだけですみます。
 当院では“虹の会”という人工肛門をもっている方の会があります。2ヶ月に1回最終金曜日の午後2時より集まり、講演や情報交換などの交流が行なわれております。
 人工肛門には、一時的に作ってあとで閉じておなかの中にもどす一時的人工肛門と、一生涯おなかより便が出るようにした永久的人工肛門があります。
2.直腸ガンとは?
 直腸ガンを切除する際には、よく人工肛門が作られます。
 直腸とは肛門のすぐ奥の大腸で、肛門から約15cm以内の距離にあります。直腸ガンとはこの直腸の粘膜からできた悪性の腫瘍を言います。
(症状)
  1. 肛門よりの出血
    出血はまっ赤で痔の出血と区別しにくく、出血するのは痔だろうと思ってほうっておいたら直腸ガンだったという例はよくあります。
  2. 便が出にくくなる。
    できもの(ガン)ができているため便の通過を妨げ、便が出にくくなります。
  3. 便が細くなる。
    できものができるため直腸の内径が狭くなり便が細くなります。
  4. 便をしても残った感じがする、便をしてもまたすぐ便に行きたくなる。
    できものができているため便が全部出ず、直腸の中に便が残ることになり、このような症状をきたします。
  5. おなかがはる。
    できもの(ガン)ができているためガス、便が全部出ず腸の中にたまるためこのような症状をきたす場合があります。
  6. どうき、息切れなど貧血の症状。
    できものより出血をきたし、貧血のためにどうき、息切れがする場合があります。
(治療法)
 治療としては、早期のものは内視鏡(カメラ)を肛門から入れて取ったり、ガンを肛門からひっぱり出して、おなかを切らずに切除することができます。
 しかし進行した直腸ガンはおなかを切って取らなければなりません。ガンが肛門からある程度離れたところにできた場合は、ガンの下で直腸を切りガンの奥で大腸を切り、残った大腸と直腸をつなぐ手術で肛門を残すことができます。(直腸前方切除術)
 ガンが肛門にかなり近いところにできた場合でも、最近では器械の進歩により、ガンの下で直腸を切り、ガンの奥で大腸を切り、両者を縫い合わせて肛門を残す事ができます。(低位前方切除術)
 しかし、ガンが肛門に非常に近いところにできた場合、あるいはガンの一部が肛門にまでのびてきた場合は、肛門を残すことは非常にむずかしくなります。すなわち、肛門も一緒にとらなければなりません。この場合は、ガンができた直腸の奥の大腸(S状結腸)でS状結腸を切断し、これより下のS状結腸、直腸、肛門を全て切除し(ひっこぬき)、この切断して残ったS状結腸をおなかの外へ出し、永久的な人工肛門とします。(直腸切断術(マイルズ手術))
3.御質問者へのお答え
 この方の例では、おそらくガンが非常に肛門に近いところにできたため、人工肛門を作る直腸切断術を勧められたものと思われます。肛門からある程度離れた奥にガンができた場合は、先に述べましたように、低位前方切除術や超低位前方切除術を行い肛門を残すことができますが、肛門に非常に近くにできたガンの場合には、手術のあと、再発する危険があるため、肛門も取ってしまって人工肛門を作る直腸切断術を行わざるを得ません。
 この直腸切断術は肛門の非常に近くにできた直腸ガンに対してはこれまでに述べてきた方法の中では、最も再発する危険が少ないと考えられるからです。
(肛門の非常に近くにできたガンの場合、S状結腸、直腸と同時に肛門の括約筋の一部も一緒に取って肛門の一部を残し、おしりから便を出すようにする肛門括約筋切除術という方法も最近行われていますが、再発がどの程度になるか、まだ長期の成績は出ていません。)
 だれでも、これまでおしりから便が出ていたのに、いきなりおなかから便が出るようになるといわれますと、大変なショックをうけます。かんべんしてほしいと思われるでしょう。しかし、やむをえない状況を理解され、みなさんはこのショックを通り抜けた後、人工肛門を受けいれ、普通の生活を送っておられます。
 でも、できればおしりから便を出せる手術はないものか、と思うのが人情です。
4.人工肛門を作らない手術、直腸切断術+薄筋形成術(dynamic graciloplasty)について
 ガンが再発するのはいやだけど、人工肛門だけはかんべんしてほしいと言われる方もよくおられます。こういう方に対しては、直腸切断術+薄筋形成術(dynamic graciloplasty)という方法があります。
 これはどういう方法かと申しますと、まず直腸ガンに対して、直腸切断術を行い下のほうのS状結腸、直腸、肛門をガンもろとも完全にとってしまいます。
 そのあと、人工肛門をおなかに作るのではなく、もとの肛門のあったところに作ります。しかし、この人工肛門には、肛門をしめる働きはありません。そこで人工肛門にしめる働きをもたせるために、足の薄筋という筋肉をおしりにもってきて、人工肛門のまわりにまきつけて、しまりをもたせます。これが薄筋形成術です。この薄筋は、足の動きにはほとんど関係のない筋肉です。
 もちろん、普通の肛門と100%同じというわけにはいきませんが、約7割の方は満足されています。
 また最近、日本ではウォシュレットが普及しているため、手術の後、排便回数が多い場合でも、これに伴う不具合はかなり解消されています。
 どうしてもおなかから便のでる人工肛門は絶対にいやだと言われる方とっては、これからはこの薄筋形成術が1つの選択肢と思われます。
 肛門の非常に近くにできた直腸ガンや肛門までガンがのびてきた場合、それでも絶対に人工肛門は作らないでほしいという場合、再発が少ない方法として、現時点では、直腸切断術+薄筋形成術しかないものと思われます。
 多くの方は人工肛門に順応されあまり気にせずに生活しておられると思いますが、なかには人工肛門に泣いておられる方も少なからずおられるものと思われます。その方々にとりましても、薄筋形成術は朗報と思われます。
(担当 消化器大腸肛門科 飯田 善郎 外科部長)
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