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健康教室のご案内
当院では、患者さんや、ご家族の方々、地域の皆様を対象にテーマを設け、
健康教室を行っておりますので、お気軽にご参加ください。普段気がかりなことも気軽にご相談ください。
副院長・小児科部長/加藤 英治
副院長・小児科部長
加藤 英治
1.夜ふかしの子どもが増えている
 深夜にコンビニやスーパーに行くと小さな子どもを連れた親子を見かけます。親の夜型の生活が子どもに影響して、わが国では夜10時以降も起きている子どもが増えており、2000年の調査では3歳児で約半数が夜10時以降も起きています。また、わが国の中学生は世界で一番眠っていないといわれています。

2. 睡眠時間と学力の関係
 わが国のデータや米国のデータから、睡眠時間が短くなると学力が低くなることが指摘されています。睡眠時間が短いことは授業中に寝てしまうといったことだけでなく、学力も含めて子ども健康にいろいろな面で大きな害があることが示されています。
 小児神経科医の神山潤東京北社会保険病院副院長は子どもの睡眠の分野の第一人者で、一般向けに多くの著書を出版されています。興味のある方はぜひ読んでください。

健康教室の様子

3.子どもの夜ふかしの問題点
 神山潤先生が指摘している夜ふかしの問題点は次のような5つの点です。夜ふかしをすると、生体時計と地球時計のズレが拡大するので慢性の時差ぼけになります。明るい夜はヒトの生理を狂わせ、生体時計とメラトニン分泌へ影響し、睡眠不足は老化を進め、うつ病のリスクになり、寝ないと太るので生活習慣病の原因となり、脳が低セロトニン状態になるのでイライラし、キレるようになります。
 メラトニンというホルモンは夜暗くなると分泌され、一生のうちで1〜5歳のころに最も多量に分泌されます。明るいとメラトニンの分泌が抑制されるので、明るい夜の時間が長いとメラトニンの分泌が抑制されることになります。小児期にメラトニン分泌が低下すると、(1)性的な成熟の低年齢化(朝食抜きで睡眠時間が少ないほど初潮年齢が早い、日野林俊彦大阪大教授)、(2)将来の発ガン発生率の増大、(3)老化促進が起こるだろうと予想されます。
 また、夜ふかしは気持ちを安定させる作用のあるセロトニン神経系の活性を低下させます。セロトニン神経系は、覚醒時に活発に活動し、朝の光を浴びることと、リズミカルな筋肉運動で活性化されます。さらに、このようなセロトニン神経系の活性化が継続すると自、セロトニン神経系の活動レベルはさらに高まる特徴があります。夜ふかし朝寝坊をすると、朝の光を浴び損ねて活性化が阻害され、慢性時差ぼけによる体調不足で活動量も低下するので、リズミカルな筋肉運動量が低下し、セロトニン神経系の活性低下を招きます。
低セトロニン後遺症に関する関係図

4.睡眠不足はメタボリックシンドロームにつながる
 睡眠不足は、運動量の低下をもたらすだけではなく、食欲や肥満と関連するホルモンであるレプチンを低下させ、グレリンを上昇させ、その他にコルチゾールの分泌低下不良、成長ホルモン分泌低下?(脂肪分解の低下)、耐糖能の低下をもたらし、遅くまで起きているので食べる量も多くなり、肥満をもたらし、強いてはメタボリックシンドロームを起こす一因になります。メタボ健診では食事や運動に注意が払われていますが、睡眠の問題はまったく考慮されていません。
 社会の24時間化、深夜営業のコンビニ、深夜まで放送しているテレビ、残業させる会社など、夜ふかしや睡眠不足を強いるさまざまな社会的要因があります。社会全体が睡眠不足の害を認識しないと変わるのはむずかしいと思いますが、子どもだけではなく大人も含めて、睡眠不足のために健康が蝕まれている病的な社会にわが国は陥っています。お天道様と一緒に起き、お天道様が沈むのと一緒に眠るのが、本当は一番自然なのでしょう。せめて、乳幼児期には、明るくなったら起きて、暗くなったら寝させる生活リズムをつけさせるべきでしょう。
夜更かしを招く要因とその影響

5.眠気とは心と体と頭脳が出している疲れのサイン
 睡眠は心と体と頭脳の栄養です。授業中に居眠りをしている小学生や中学生をみて、頑張っているからかわいそうと同情するのでなく、異常な生活パターンのために心身ともに疲れきっている状態だと判断して介入すべきです。
 睡眠不足による失われるものが社会的にも大きいので、フランス政府が「国民よ、もっと眠れ」と安眠キャンペーンをしています。わが国も官民あげて睡眠について真剣に考えるべきでしょう。

健康教室の様子

6.子どもたちの健やかな発育のためにの8か条
 神山潤先生は、子どもたちの健やかな発育のために昼のセロトニン・夜のメラトニンを高める8か条を提唱しています。その内容は、(1)毎朝しっかり朝日を浴びて、(2)ご飯はしっかりよく噛んで。特に朝はきちんと食べて、(3)昼間はたっぷり運動を、(4)夜ふかしになるのなら、お昼寝は早めに切り上げて、(5)寝るまでの入眠儀式を大切にして、(6)テレビ・ビデオはけじめをつけて、時間を決めて、(7)暗いお部屋でゆっくりおやすみ、(8)まずは早起きをして、悪循環(夜ふかし→朝寝坊→慢性の時差ぼけ→眠れない)を断ち切ろうです。

7.子どもの成長に必要な7つの育児条件
 米国の著名な小児科医のT.ベリー・ブラゼルトンと児童心理学者のスタンリー・グリーンスパンが提唱している子どもの成長に必要な7つの育児条件を紹介して3回シリーズの講演を終えます。

   1)永続的な温かい関係
   乳幼児は保育者との親密な関係を必要としている。こうした関係は早期の英才教育などよりはるかに
   子どもの情緒的・知的発達に重要である。それが欠けると、考え方や意欲、他者とのかかわりなどで、
   子どもが問題をかかえることになりかねない。

   2)安全な環境を保証する
   胎児のころから、物理的にも生理的にも安全な環境で育てること。有害な化学物質や暴力から子どもを守ろう。

   3)一人一人に合った保育
   子どもは一人一人みんな違う。その子に合った保育をすれば、学習障害などを防ぎ、
   潜在能力を大きく伸ばすことができる。

   4)成長段階に応じた体験
   子どもは成長段階に応じた保育を必要としている。非現実的な期待を押しつけると、子どもの発達を妨げる。

   5)愛と理解に支えられたしつけ
   子どもには決まりとしつけが必要だ。ただし頭から抑えつけるのではなく、子どもの気持ちを理解すること。
   レッテルを貼らずに子どもの可能性を信じよう。

   6)地域の支えと文化的土壌
   人格を形成するには、地域社会の安定が不可欠。多様な文化に触れさせつつ、一貫した価値体系の中で育てよう。

   7)子どもの未来を守る
   すべての子どもたちに必要な保育を。それができなければ、未来は危うい。

健康教室の様子

8.終わりに
 福井の子どもたちの大部分はこれらの条件を満たす環境で育てられていると思います。豊かな自然、安定した家庭と社会がりっぱな子どもを育てます。
 落ち着いて愛情あふれる雰囲気で、家族が食卓を共にし、子どもに早寝、朝起き、朝ご飯を食べるといった基本的な生活習慣を身に付けさせること、それに、けんかやけがは付きものですが、子どもたちが群れて時のたつのを忘れるほど一生懸命によく遊ぶことにより、子どもの心身の健康が形成されることを再確認しましょう。親(大人)の都合や不健康な生活に合わせた生活を子どもに強いる現在の生活スタイルを反省すべき時期です。ひょっとすると取り返しのつかない時点までわが国の社会が来ているかも知れません。

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