
副院長・小児科部長
加藤 英治
1.食の問題は肥満だけでない
食事の問題といえば肥満で、肥満との関連で、一般に過食、飽食が注目されがちです。
しかし、孤食が端的に表現しているように子どもが誰とどのように食べているのか、即ち家庭の食卓の状況が忘れられていますが、本当は一番大きな問題です。
岩村暢子は、1960年以降生まれの母親世代の戦後日本社会における特異的な成育歴と、この母親が子供を生み育てた60年以降の史上類を見ない激変社会という二大ファクターの乗算が、今日の娘世代を生みだし、その結果として〈現在家族〉が誕生し、必然的に食は崩れたと指摘しているように、食卓を家族全員でほのぼのと囲んでいる風景はもはや過去のものになっています。
井上美津子昭和大学歯学部教授は、おいしく、楽しく、上手に「食べる」を育てる条件として、食事環境、食事の内容、健康状態、家庭環境、生活リズム、親子(人間)関係などを挙げています。
(
「食べる」を育てる条件:資料1)

家庭の食卓は一家団欒の場で、心を育てる、食文化を伝える場です。食事をさせることは単に子どもに餌を与えることでありません。食卓の意義をみなさんに再考してほしいと願っています。
2. 子どもの肥満はなぜ悪いか
現在、学童の約10%は肥満度20%以上の肥満です。
子どもの肥満は若くして動脈硬化性疾患に陥る危険性があること、肥満は生活習慣病発症の最大要因であること、小児肥満は成人肥満に移行することの点で問題になっています。肥満度が+50%以上の高度肥満児の70%は、脂肪肝、高脂血症、高インスリン血症、メタボリック症候群といった何らかの異常を合併しており、肥満は生活習慣病発症の最大要因です。また、7歳の肥満の40%、思春期肥満の70〜80%が成人肥満に移行するといわれているように、小児肥満が成人肥満に移行する点も問題です。メタボリックシンドロームは内臓脂肪症候群とも呼ばれ、動脈硬化を進行させる危険因子を持っている状態で、高度肥満児5人に1人はメタボリックシンドローム状態である。
子どもの糖尿病と言えば、膵臓のランゲルハンス島にあるインスリンを分泌するβ細胞が破壊され、インスリンが出なくなる1型糖尿病でしたが、近年は中年成人にみられた2型糖尿病が子どもにも多くなっています。子どもの2型糖尿病は、中学生の発症率が小学生より高いこと、高度肥満の男児が糖尿病になりやすいこと、遺伝的素因が強く関与していることが特徴です。
(肥満の発症要因:資料2)

肥満の発症要因は、外部環境要因として、車社会であり能率社会になっていて、家庭では室内の生活が多く夜型生活になっており、学校でも座ってする授業が多いなど運動する機会が減っていること、生活習慣要因として、過食、高脂肪食、運動不足があり、遺伝要因として遺伝素因が挙げられています。また、小児の肥満では、成人に比べて生活歴の短いので、生活習慣要因より遺伝要因による肥満が顕在化しやすいこと、精神的ストレスも肥満の原因になることにも注意してください。
3.富山スタディが示すこと
徳村光昭ら(日児誌 108:1487-94,2004.)による平成元年度に富山県で出生した10,450人を対象に、3歳時に9,426人、小学1年生時に9,472人、小学4年生時に8,252人、中学1年生時に8,098人を追跡調査した富山出生コホート研究によると、朝食欠食児に肥満が多いこと、また、朝食欠食児の方が、起床時刻が遅いこと、就寝時間が遅いこと、一人で朝食を食べること、テレビ視聴時間が長いことが示され、朝食欠食は家庭での生活習慣の乱れと密接に関連していることが明らかにされました。
子どもの肥満を単に遺伝的素因や過食・運動不足として捉えるのではなく、生活習慣の乱れが背景に存在することを考慮して対処すべきです。
4.肥満の原因となる食事と改善点(太田百合子より)
1.「早食い」を防ぐ
2.夕食時刻が午後7時過ぎるのはよくない
3.朝食をきちんと摂る習慣にする
4.料理の「大皿盛り」はあまりよくない
5.肉料理に献立が偏らないように
6.「おやつ」は量や時間を決めて、欲しがる時だけに与えるのは止める
7.食後にデザートを食べる習慣のある人の注意点
8.苦手な野菜料理は工夫が必要
9.外食回数が多い人が注意すべき点
(1) ファーストフードは月に1〜2回にする
(2) デリバリー(出前)も回数を考えよう
(3) レストランでの食事は栄養バランスを考えて注文
10.給食でお代わりをしない、早食い競争をしない
11.孤食を避けよう、子どもと一緒に食べよう
12.「怒られる」ことの多い子どもは過食になりやすい