
摂食・嚥下障害認定看護師、呼吸療法士
端 千づる
食というのは人間の欲求のひとつであり、関心の高いものです。しかし「食べる」ことに対してはよく注目されていますが、「食べられない」事に対しては、置き去りになっています。
今回は毎日の生活の中で、食べたり飲んだりすることに障害がある方に、どうしたら安全に美味しく食べれるのか、どのような物を食べていいかと言うお話をしたいと思います。
嚥下という言葉は、あまり聞きなれた言葉ではありませんが判り易く図式など使い説明していきます。
■ 嚥下とは・・・飲みこむことを言います
- 高齢になったり、病気でかむ・食べる・飲み込むことが、できなくなった状態を嚥下障害といいます。私は、この方達に対してのご相談を受け指導させてもらっています。嚥下について説明します。
食べ物を目で見て口の中へ、そして胃の中まで送るには、5段階の段階に分かれています。
■ 嚥下のメカニズムの5段階について
- 先行期(食物の認知)
食物を目で見て認知し、口元まで持っていくまでの段階をいいます。

- 準備期(食物の捕食と咀嚼)
食物を口に取り込み、かみ終えるまでの段階をいいます。

- 口腔期
食物を塊にし、口の中からのどに送り込む段階をいいます。

- 咽頭期(嚥下反射)
食塊を、のどから食道に送り込む段階をいいます。

- 食道期
食塊を、食道から胃へ送り込む段階をいいます。
いずれも、健康な人にとっては何でもない動作ですが、病気(嚥下障害)になって、初めて食べることが複雑なメカニズムであるということに気づかされます。
■ 食べられないとどうなるか?
嚥下障害の問題点をあげてみました。
- 食べ物が摂れず低栄養となり ⇒ 体力が低下します。

- 水分が摂れなくて脱水状態になり ⇒ 脳梗塞の危険があります。

- うまく飲み込めず誤嚥性肺炎になり ⇒ 生命の危機となることがあります。

- 食べる楽しみの喪失となり ⇒ 心理・社会的問題があります。
「食べられない」ということは、病気という医学的な問題と、人間として生き甲斐や楽しみという心理的な問題を引き起こします。(図1)
| 図1 |
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正常ルート:食物は口からのどを通過して食道へ運ばれる (口→のど→食道→胃) |
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誤嚥:食物が誤って気管に入ってしまう。 (口→のど→気管→肺) |
■ 一部の障害で嚥下障害に?!
- 舌を動かさずに水を飲んでみましょう
- 口を開けたまま水を飲んでみましょう
ここで、皆さんに舌・口を動かさずに「水を飲み込むことを体験」していただきます。例えば、脳梗塞などの病気になった人はこの動作ができません。ちょっとした動作ですが、出来ないと嚥下障害になってしまいます。
■ なぜ食べることがいいのか?
- 食べる ⇒ 食物が通る ⇒ ・腸管の免疫力が高まる ・腸内細菌が活性化する
食べることで、体力が戻ってくる要因になります。
■ 食べることと脳の関係
- 目で物を見ること、くちびるには繊細な神経があり、舌、歯、喉などを動かすことで脳に刺激を与えます。人間の五感として、眼(視覚)、耳(聴覚)、鼻(嗅覚)、舌(味覚)、皮膚(触覚)の器官がありますが、「食べる」時には五感をフルに使って食べているのです。
■ 口から食べることの意義
- 生命維持のための栄養補給 の他に
- 食の楽しみ(食物が口を通過する意味)が実感できます。
* かんで味わう * 仲間と共に食べる喜び * 地域の名物や伝統の味を楽しむ
■ もしも食べられなくなっても・・・
- 病院では、「点滴」、「経管栄養(鼻から管を入れたり、手術で胃に管を入れる方法)」などの対処法で改善されます。しかし、満腹感はあっても満足感はありません!
■ 「食べる」ことは
- 人間の生理的な欲求の中でも最も高いことです。
- 脳の活性化にもつながることです。
- 生命力を強くすることになります。
食べることは、人間らしく生きるするためにとても大切なことですね。
■ こんな症状があったら注意!(図2)
| 図2 |
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■ 嚥下障害かな?と思ったら(図3)
| 図3 |
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■ 嚥下障害の方に適した食品形態としては、次の通りの物が良いでしょう。
- 密度が均一である。
- 適当な粘度があって、バラバラになりにくい物。
- 口の中や、のどを通過する時に変形しやすい物。
- ベタつかず、粘膜に付着しにくい物。
- しっかりした濃い目の味の物。
条件に合う食品の代表は、ゼラチンゼリーや豆腐などがあります。
■ 嚥下障害の方に適さない食品の例(図4)
| 図4 |
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