
整形外科部長
五之治 行雄
関節鏡(内視鏡)検査から見た膝関節の軟骨の状態を皆さんに画像で見ていただき、変形性膝関節症を理解していただき、膝関節が痛むわけも合わせてお話ししたいと思います。

最初にそのキーワードとして3つあげますのでぜひ覚えて帰ってください。まず膝には関節面が3つ(「内側」と「外側」、「膝蓋(サラ)大腿骨の間の関節」)あり、さらには一番大事な「関節軟骨」がどのようなものであるかをご理解下さい。そして、「荷重軸」とは人間が立って体重をかけたとき、足全体にはどのような方向に力が働くかを示したものです。

膝関節には関節面が3つあり、ひとつは膝蓋骨(サラ)と大腿骨の間の関節面です。そして、大腿骨(上の骨)と脛骨(下の骨)からつくられている関節面は内側と外側にあり、その間にはそれぞれ半月板があります。また膝の中央部には膝の安定性に重要な働きをする十字靭帯があります。
ときどき「膝周囲の筋肉を鍛えて下さい」と、聞かれた方もおられると思いますが、特に重要な筋肉はももの筋肉(大腿四頭筋)です。その筋肉を鍛えることにより、膝関節の負担を軽減し変形性膝関節症の進行を防ぐことになります。

関節の潤滑機能(スムーズな関節の動き)に関しては、人間を含めた動物の関節の潤滑性能はきわめて優れていると言えます。まず関節軟骨と関節液が高潤滑性に寄与し、半月板が補っています。関節液は、潤滑液としての働きのほかに関節軟骨への栄養の補給を行っております。
関節軟骨は、軟骨細胞と基質(マトリックス)からなり、軟骨組織内には、神経や血管はほとんどありません。軟骨組織は軸圧と屈曲に対して柔軟性を示し、また軟骨には(1)硝子軟骨、(2)弾性軟骨、(3)線維軟骨の3種類があり、関節軟骨は通常、硝子軟骨(II型コラーゲン)で構成されております。厚さは1〜5mm、膝関節では2〜4mmぐらいです。いったん硝子軟骨が壊れると再生されませんが、その代わりに線維軟骨で修復されます。

健康教室の様子
関節軟骨の構造は、水分が80%、コラーゲン(II型)が12%、プロテオグリカン復合体6%、その他に糖タンパク等が、網目状に作られています。例えば、スポンジに水を含ませて膨れた状態でこの軟骨に体重、もしくは衝撃がかかるとスポンジの水が押し出されて縮んだ印象と思って下さい。

変形性膝関節症のお話をしますと、関節の構成要素の退行変性(加齢変化)により軟骨が壊れて変形して、骨軟骨の増殖性変化をきたす疾患です。さらに退行変性を基盤として遺伝的要因、加齢、肥満、関節不安定性、労働やスポーツによる関節への負荷などがその進行に関わりがあります。また日本人の700万人〜1,000万人が変形性膝関節症に罹患していると言われております。
変形性膝関節症の原因は不明ですが、加齢(老化)、筋力低下、肥満、膝の内反(0脚変形)などの要因が関係しているといわれております。また、半月板損傷、靭帯損傷、骨折、骨壊死、感染などが変形性関節症の原因となることがあります。よく患者さんから変形性関節症と骨粗鬆症との関係を聞かれることがありますが、直接的には関係はありません。
変形性膝関節症の症状として、膝関節の痛み(歩行時痛、起立時痛、安静時痛など)を大部分の人が訴えられます。また、関節がはれたり(水が貯まる)、膝が伸びないとか、正座不能などの可動域制限、外見上の膝の変形(O脚やX脚)などが見られます。

「荷重軸」とは下肢の荷重X線正面像で、それぞれ左右の股関節の中央から足関節の中央に引いた線のことをいいます。この線が膝の中央を通っている状態が正常であり、それに対して膝の中央よりも内側を通る場合を内反膝(O脚変形)、逆に膝の外側を通る場合を外反膝(X脚変形)といいます。日本人の場合内反変形が大部分(85%)を占めます。
日常生活上、まず膝に加わる負担を軽減することが必要です。

体重のコントロールのほか日常生活の注意点としては、
- 「正座⇒椅子」
- 「階段の昇降⇒手すりを使用」
- 「坂道歩行⇒特に下りに注意」
- 「長時間歩行⇒自転車」
- 「和式トイレ⇒洋式トイレ」
などの工夫をして下さい。また、膝の保温も大切です。

健康教室の様子
保存的治療としては、運動療法(筋力強化、可動域訓練)、物理療法(温熱療法)、装具療法(足底板、膝装具)、薬物療法(内服、座薬、外用剤、関節内注射、ステロイド、ヒアルロン酸)などがあります。しかし、保存的治療で症状が改善しない場合には手術療法を考慮する必要があります。
運動療法として、大腿四頭筋の強化は、膝関節の負担を軽減し変形性膝関節症の進行を防ぐことになります。「継続は力なり」とも申しますが、すぐに効果が出てくるものではなく、毎日の筋力強化訓練を継続する必要があります。

人工膝関節全置換術は、通常60歳以上の末期の変形性膝関節症および関節リウマチ(関節リウマチは破壊が強い場合は若年者でも行います)に対して行い、10年たっても80〜90%以上の人が良好の状態が続いています。また、条件があえば内側の半分だけを取り替える人工膝関節片側置換術の方法もあります。ただし、問題点(合併症)としては人工関節の緩み、骨融解、感染の危険性があり、最近特に問題となっているのは下肢深部静脈血栓症とそれに引き続き起こる肺塞栓症があります。

最後になりますが、今後の展望としては軟骨を再生あるいは修復させるような内服薬、あるいは関節注射薬の開発が待たれるところです。また軟骨移植等の再生医療が発展し、さらに長期耐久性のある人工関節が開発されることに期待したいと思います。