
精神神経科 医長
村田 憲治
当院の精神神経科では、毎週火曜日の午後から「物忘れ外来」を行っています。
そこに受診される、患者さん・家族の方から「物忘れと認知症の違いがわからない」と言うような質問をよく受けます。そこで、認知症の早期発見・早期治療のために、本人が「物忘れか? 認知症か?」の見分け方のお話をしたいと思います。

本題に入りますが、認知症高齢者の将来推計では高齢化が進み、毎年30万人ずつ増え、現在2007年は200万人ぐらいですが更に、3年後の2010年には約230万人に増える状況です。認知症とは、正常に発達した知的機能が低下して、生活に支障が出た、病的な状態を言います。
記憶力低下=認知症ではありません。以前は、物忘れか認知症かの2つに分けられていました。つまり、物忘れは正常な老化と考えられていました。しかし、最近では、
- 従来「物忘れ」とされていた状態
- 明らかに記憶力は低下している
- 「記憶力低下」以外の症状がない
- 生活には支障がない(認知症ではない)

健康教室の様子
などを特徴とする軽度認知障害と言われる概念が出てきて、正常―軽度認知障害―認知症の3つに分けられるようになっています。

なぜ軽度認知障害ができたかと申しますと、物忘れの50%は認知症に至らずそのまま経過しますが、後の50%は数年以内に認知症になることがわかってきたからです。

認知症の原因には、
- アルツハイマー病
- 脳血管性の認知症
- そのほかの変性疾患
- 栄養障害
- 外傷
- その他
などがあります。そこで、当院の物忘れ外来での初診時に診断を分析してみますと、(1)アルツハイマー病が53% (2)脳血管性認知症9% (3)軽度認知障害15% (4)正常4% (5)精神疾患7% (6)その他13%となっています。

大枠では、下記の通り分かり易くポイントを箇条書きにしてみました。

健康教室の様子
- 【アルツハイマー病と物忘れの違い】
-
| アルツハイマー病について |
物忘れについて |
| 生活に支障あり |
生活に支障なし |
| 憶えるのが苦手 |
思い出すのが苦手 |
| 多彩な症状 |
記憶力低下のみ |
- 【アルツハイマー病の症状】
-
- 記銘力障害(憶えられない)
- 見当識障害(日付・場所・人が分からない)
- 実行機能障害(段取りよくこなせない)
- 幻覚・妄想
- 無関心 などです。
- 【アルツハイマー病の特徴】
-
- 記銘力障害で発症
- 徐々に、いままでできたことができなくなる
- 歩行障害など
- 体の症状は末期まで出てこない などです。
実際に症状がどのように見られるかと言いますと、
- 記銘力障害
-
- 新しく憶えることができない
- 物をよくなくす
- 同じことを(初めてのように)何度も言う
- エピソード(内容ではなく、話をしたこと自体)を忘れる などです。
- 見当識障害
-
- 日付・場所・人がわからなくなる
- 毎日新聞を読んでいるのに、今年が「平成何年」か、わからない
- よく通る道に迷う
- 孫の顔がわからない などです。
- 実行機能障害
-
- 計画が立てられない=家事ができない
- 段取りよくこなせない=料理の手順がおかしい、異常に時間がかかる などです。
- 幻覚・妄想
-
- 幻視=既に亡くなった人が見える
- 段物盗られ妄想=「嫁が財布を盗る」 などです。
- 無気力・無関心
-
- 身なりを構わなくなった
- 好きだった趣味をしなくなった などです。
最後のまとめとしては、認知症は、加齢による老化ではなく、病的な状態ですので、身近なご家族の方が今までとは違う本人の行動や、表現などに早く気がつかれ、早めに病院を受診され治療されますことをお勧めします。